新作映画の撮影の為、台湾に潜入した空族
ストリートを彷徨い、音楽を掘るうちに、
たどり着いたのは原住民たちの住む村だった―

『サウダーヂ』(2011)『バンコクナイツ』(2016)など独自の路線で、映画界の裏街道をひた走る映像制作集団「空族」。彼らの映画の最大の特色は徹底したリサーチにある。映画の舞台となる場所を、とにかく歩きそこに住む人々と交流を深める。そして、現地の人々、歴史、そして現在を知るところから映画が始まる。『バンコクナイツ』ではタイ、ラオスで撮影されたが、今回の新作映画(2026年撮影予定)の舞台となるのは麗しの島、台湾。2020年以降、コロナ渦の最中に空族は台湾に幾たびも飛びリサーチを続けてきた。『潜行一千里 ILHA FORMOSA』は、そのリサーチの過程を記録したドキュメンタリーだ。
ストリートに流れる音楽に導かれるように、彼らは台湾原住民たちの住む村に向かっていく。アミ族の住む花蓮県タパロン部落。そこから3000メートル級の中央山脈を越えて辿り着いたセデック族の部落。そして台湾の最南端に位置するパイワン族の村まで。失われつつある原住民の言葉でラップし始める若者たち、原住民の伝統音楽を現代にアップデートして新しい音を生み出そうとするアーティストたち。空族は旅の過程で出会った人々と交流を深めながら、日本も含めた様々な国からの侵略の歴史をも知ることになる。
しかし、過去の歴史をはねのけるように人々は活き活きと踊り、歌い、笑う。フィナーレは毎年タパロンで行われるアミ族最大の豊年祭だ。艶やかな原住民の衣装を纏った人々は三日三晩踊り続ける。台湾の過去と現在、そして未来。時空を超え、ただ私たちはその祝祭に身を委ねるのだ。

新作映画の撮影の為、台湾に潜入した空族
ストリートを彷徨い、音楽を掘るうちに、
たどり着いたのは原住民たちの住む村だった―

『サウダーヂ』(2011)『バンコクナイツ』(2016)など独自の路線で、映画界の裏街道をひた走る映像制作集団「空族」。彼らの映画の最大の特色は徹底したリサーチにある。映画の舞台となる場所を、とにかく歩きそこに住む人々と交流を深める。そして、現地の人々、歴史、そして現在を知るところから映画が始まる。『バンコクナイツ』ではタイ、ラオスで撮影されたが、今回の新作映画(2026年撮影予定)の舞台となるのは麗しの島、台湾。2020年以降、コロナ渦の最中に空族は台湾に幾たびも飛びリサーチを続けてきた。『潜行一千里 ILHA FORMOSA』は、そのリサーチの過程を記録したドキュメンタリーだ。
ストリートに流れる音楽に導かれるように、彼らは台湾原住民たちの住む村に向かっていく。アミ族の住む花蓮県タパロン部落。そこから3000メートル級の中央山脈を越えて辿り着いたセデック族の部落。そして台湾の最南端に位置するパイワン族の村まで。失われつつある原住民の言葉でラップし始める若者たち、原住民の伝統音楽を現代にアップデートして新しい音を生み出そうとするアーティストたち。空族は旅の過程で出会った人々と交流を深めながら、日本も含めた様々な国からの侵略の歴史をも知ることになる。
しかし、過去の歴史をはねのけるように人々は活き活きと踊り、歌い、笑う。フィナーレは毎年タパロンで行われるアミ族最大の豊年祭だ。艶やかな原住民の衣装を纏った人々は三日三晩踊り続ける。台湾の過去と現在、そして未来。時空を超え、ただ私たちはその祝祭に身を委ねるのだ。

MESSAGE

メッセージ

この映画のはじまりは空族の前作『典座-TENZO-』(2019)をカンヌ映画祭やマルセイユ映画祭に出品した時に知り合ったフランス在住の台湾人プロデューサー、Vincent Wang(ツァイ・ミンリャン、ワン・ビン作品などをプロデュース)に「お前ら、台湾で映画を撮らないか?」と声をかけられたのがきっかけでした。これまでタイ、ラオス、フィリピンなどアジアで映画を製作してきた空族にとって台湾は親しい友人がいる国ではありましたがカメラを持って撮影したことはない“いちばん近くて遠い国”でもありました。これは千載一遇のチャンス!と、2020年に私たちはまずは台南市に住んでいる友人たちを訪ね、そこを足掛かりに台湾で映画を作るためのリサーチを開始しました。これまで空族は劇映画を製作する前段階のリサーチや旅の道程を『潜行一千里』と称してドキュメンタリー作品として発表してきました。それは所謂メイキングと呼ばれるような劇映画のための記録というよりも、映画製作の準備過程でそれらの国々で学んだ文化や人々の生活、哲学など劇映画では描ききれない部分をドキュメンタリーによって補い、伝えたいとの想いがあったからです。

台湾と言えば私たちには一般的に、大陸との緊張関係に常にさらされている“もうひとつの中国”という中華圏のイメージが強いのですが、原住民の部落に入るとそこには、かつてはオランダ、次に中国大陸、そして日本も含めて数々の強国からの植民地政策を経て、逆にそれらの異文化を取り入れながらも自らの部族とアイデンティティを守り続けている現在の原住民の人々がいました。その原色に彩られた姿は私たちの持っていた中華圏である台湾のイメージを一新し、西洋と東洋の様々な文化の異なる移民たちと、もともと住んでいた原住民たちが長い時間をかけて共に台湾という小さな島でお互いに“共和”の道を模索し歩んでいる姿が浮かび上がってきたのです。
このドキュメンタリーの中で台湾のラッパー、大支(ダーギー)が「台湾の特徴とはさまざまな文化や音楽が融合するところ。そう、メルティングポットなんだ」と語っていますが、特に2020年代から原住民の若者たちが自分たちのルーツミュージックを様々なジャンルの音楽とミックスさせて台湾独自の新しい音楽を創り出しています。そこから何が生まれ出づるのか?まさにこの現在進行形の台湾の姿を観ることはグローバル化、移民の時代を生きる私たち日本人にとっても大きなヒントになることだと考えています。

空族(富田克也・相澤虎之助)

CAST

キャスト

アイさん

アミ族。花蓮県タパロン部落で檳郎屋と介護師をしている。
かつて山梨県下部温泉で働いていたこともあり日本語が上手。
台湾での空族の道先案内人。

キティ

アミ族でアイさんの弟の娘。
豊年祭で踊るためにタパロンに帰省中。
空族に大きなインスピレーションを与える。

大支(ダーギー)

台南出身の本省人ラッパー。
政治的なメッセージも辞さずダライ・ラマとも共演した台湾のレジェンドラッパーの一人。

ラブくん

セデック族×漢族(本省人)のハーフ。
DJ である自らを愛と調和をもたらすシャーマンと捉えている。

アバオ

パイワン族の人気歌手。
2020 年台湾のグラミー賞である金曲賞を受賞。
進化する原住民音楽のトップランナー。

ラナウ

パイワン族×アミ族のハーフ。
アバオを敬愛し、Instagramでのみ活動するミュージシャン。
原住民専門のチャンネル「原住民 TV」のキャスターでもある。

シャオピー

アミ族×パイワン族のハーフで歌手。
自身を混血のアー・パイ族と称し、原住民独特の“虚詞”による歌唱を披露する。

ヘンジョン

花連市ポポ部落出身のアミ族ラッパー。
アバオに影響を受けアミ語を積極的にラップに取り入れ楽曲を製作する次世代のホープ。

ルンニー

その存在は謎に包まれているが、空族次回作の長編劇映画『蘭芳公司』のキーパーソンである。

CREDIT

クレジット

監督:富田克也 監督補:相澤虎之助 撮影:スタジオ石 録音:中村誠治 整音:山﨑巌、中村誠治 ドライバー:田中隆ノ介 カラーグレーディング:古屋卓麿 編集:富田克也、向山正洋 エクゼクティブ・プロデューサー:石崎尚 プロデューサー:Vincent Wang、筒井龍平 制作進行:蔡信弘、大野敦子、岩井秀世
企画:愛知芸術文化センター 製作:愛知県美術館 共同制作:札幌文化芸術交流センター SCARTS 制作・配給:空族 © kuzoku
2025年/79分/16:9/5.1ch

COMMENT

コメント

「boid paper vol.2」より抜粋
劇場窓口、オンラインショップにて11/22より販売開始!
https://www.boid-s.com/8534


『潜行一千里 ILHA FORMOSA』は主人公や物語がまだ存在する手前のリサーチであり報告である。各々のシーンは独立して点在し縦軸にも、横軸にも自由に行き来できるような不思議な作りになっている。散らばったドラゴンボールがそれぞれの場所でオレンジ色の光を仄めかしているような作品だ。

―映画編集者・大川景子


土地や人との関わりを通じてリサーチを積み重ねることや制作の過程に人々を巻き込むことが、作品を超えて社会に響いていく。僕はそんな作品の作り方を空族の活動から学んでいる。

―アーティスト・梅田哲也


数年をかけての独自の潜入調査の果てに来年(二〇二六年)には台湾を舞台にした長編の撮影が始まるという。もちろん出来上がった作品こそが彼らの「新作」ではあるのだが彼らの足取りが示すのはすでに「映画」は始まっているということだ。見えない姿、聴こえない声がその足取りに寄り添い彼らにいくつもの道筋を示す。その道筋こそが映画なのだと言ってしまいたくなる。

―boid・樋口泰人

TRAILER

予告編

THEATER

上映情報

都市 日付 劇場
東京  新宿K’s cinema 11月22(土)〜
鳥取  jig theater 11月28日(金)〜30日(日)
長野  松本CINEMAセレクト 12月14日(日)
愛知  ナゴヤキネマ・ノイ 1月2日(金祝)~
山梨  桜座 1月25日(日)
大阪  シネ・ヌーヴォ 2月21日(土)~
広島市  横川シネマ 2月21日(土)~